« 2008年12月 | トップページ

2009年3月

2009.03.24

●涙目キャリーのアクセサリー○

たとえば、

他人だったら、映画のヒロインだったら、小説のなかのあの人だったら、

きっとすぐに分かったと思う。

ちょっとした変化も、

自分の置かれている立場も、

きっと笑われてしまうほど、単純明快だったはずだ。

夜見る夢に出てくる私は、いつも風変わりな旅人だった。

たのしめばいい。

旅人はきっと私のことなんて知らない。

スクランブル交差点ですれ違う、何も語らないチャップリンのお友達だ。

| | コメント (18) | トラックバック (0)

2009.03.22

○オレンジと不思議なバニーガール●

はじめて肉離れになった。

75歳のじいさんは痛む右足を引きづりながらも、

トップオブザロックの階段をのぼる。

はじめて来た異国の地・・・

どうしてもテッペンまで上りたかった。

この歳でニューヨークに来れたこと自体、奇跡なのかもしれない。

ただ、もうひとつ、確かな何かがほしかった。

じいさんは左足でステップを踏む。

満足とは老いが進むにつれて、近くも遠くにもなるのものだ。

その瞬間、じいさんは伸ばせない腰の代わりに、口を円の字にした。ほっそろとしたイチジクみたいに。

目の前には大きなエンピツがあった。

テッペンには柔らかいオレンジがあると、タクシーの運転手から聞いていたが、

これほどまでにやさしい光だと思わなかった。

エロチックなうさぎを包み込み、それは私を中心に敬礼しているようだった。

オレンジはやがて、クリーム色の眩い光に変わっていった。

130センチの腰の曲がったばあさんが立っていた。

「よお、元気だったか」

じいさんは口元についた泡で言葉をにごらせた。

ばあさんは何も言わずに微笑んでいた。

その頭には、あまりにも単純すぎるうさぎの耳のようなものが見えた。

片耳は折れ曲がったままだ。

「さぁ、つぎはどこへいこう」

ひとつの影がぼんやり消えたとき、

また柔らかいオレンジが広がっていった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年12月 | トップページ