●涙目キャリーのアクセサリー○
たとえば、
他人だったら、映画のヒロインだったら、小説のなかのあの人だったら、
きっとすぐに分かったと思う。
ちょっとした変化も、
自分の置かれている立場も、
きっと笑われてしまうほど、単純明快だったはずだ。
夜見る夢に出てくる私は、いつも風変わりな旅人だった。
たのしめばいい。
旅人はきっと私のことなんて知らない。
スクランブル交差点ですれ違う、何も語らないチャップリンのお友達だ。
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たとえば、
他人だったら、映画のヒロインだったら、小説のなかのあの人だったら、
きっとすぐに分かったと思う。
ちょっとした変化も、
自分の置かれている立場も、
きっと笑われてしまうほど、単純明快だったはずだ。
夜見る夢に出てくる私は、いつも風変わりな旅人だった。
たのしめばいい。
旅人はきっと私のことなんて知らない。
スクランブル交差点ですれ違う、何も語らないチャップリンのお友達だ。
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はじめて肉離れになった。
75歳のじいさんは痛む右足を引きづりながらも、
トップオブザロックの階段をのぼる。
はじめて来た異国の地・・・
どうしてもテッペンまで上りたかった。
この歳でニューヨークに来れたこと自体、奇跡なのかもしれない。
ただ、もうひとつ、確かな何かがほしかった。
じいさんは左足でステップを踏む。
満足とは老いが進むにつれて、近くも遠くにもなるのものだ。
その瞬間、じいさんは伸ばせない腰の代わりに、口を円の字にした。ほっそろとしたイチジクみたいに。
目の前には大きなエンピツがあった。
テッペンには柔らかいオレンジがあると、タクシーの運転手から聞いていたが、
これほどまでにやさしい光だと思わなかった。
エロチックなうさぎを包み込み、それは私を中心に敬礼しているようだった。
オレンジはやがて、クリーム色の眩い光に変わっていった。
130センチの腰の曲がったばあさんが立っていた。
「よお、元気だったか」
じいさんは口元についた泡で言葉をにごらせた。
ばあさんは何も言わずに微笑んでいた。
その頭には、あまりにも単純すぎるうさぎの耳のようなものが見えた。
片耳は折れ曲がったままだ。
「さぁ、つぎはどこへいこう」
ひとつの影がぼんやり消えたとき、
また柔らかいオレンジが広がっていった。
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