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2009.03.22

○オレンジと不思議なバニーガール●

はじめて肉離れになった。

75歳のじいさんは痛む右足を引きづりながらも、

トップオブザロックの階段をのぼる。

はじめて来た異国の地・・・

どうしてもテッペンまで上りたかった。

この歳でニューヨークに来れたこと自体、奇跡なのかもしれない。

ただ、もうひとつ、確かな何かがほしかった。

じいさんは左足でステップを踏む。

満足とは老いが進むにつれて、近くも遠くにもなるのものだ。

その瞬間、じいさんは伸ばせない腰の代わりに、口を円の字にした。ほっそろとしたイチジクみたいに。

目の前には大きなエンピツがあった。

テッペンには柔らかいオレンジがあると、タクシーの運転手から聞いていたが、

これほどまでにやさしい光だと思わなかった。

エロチックなうさぎを包み込み、それは私を中心に敬礼しているようだった。

オレンジはやがて、クリーム色の眩い光に変わっていった。

130センチの腰の曲がったばあさんが立っていた。

「よお、元気だったか」

じいさんは口元についた泡で言葉をにごらせた。

ばあさんは何も言わずに微笑んでいた。

その頭には、あまりにも単純すぎるうさぎの耳のようなものが見えた。

片耳は折れ曲がったままだ。

「さぁ、つぎはどこへいこう」

ひとつの影がぼんやり消えたとき、

また柔らかいオレンジが広がっていった。

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